2015年4月19日

ラップ型ファンドは驚きの高コスト

最近、ラップ口座(投資一任運用商品)のノウハウを応用したとされるラップ型ファンドが相次いで登場しています(モーニングスター「「ラップ型ファンド」新規設定相次ぐ、少額で「お任せ型運用」提供」)。“ラップ口座のノウハウ”と聞いただけで嫌な予感しかしないのですが、どんなものかのぞいてみたところ、あまりの高コストに驚きました。

モーニングスターの記事によると、

“ラップ口座は、最低投資金額が高額なことや、投資顧問報酬がかかるなど、敷居が高い側面があったが、投資信託である「ラップ型ファンド」は少額から手軽に始めることができる。投資家の運用目的やリスク許容度などに合ったコースを選ぶことが可能で、市場環境に応じて資産配分の見直しも行うファンドが多く、「お任せ型運用」と言える。”

とあるのですが、そもそも市場環境に応じて資産配分の見直しを行うことができるのかという疑問が大いに沸きます。百歩譲って、それが可能だとしても、ラップ型ファンドの信託報酬はあまりに高コストです。例として3月に新光投信が設定したみずほラップファンド(愛称:Mラップ)を見てみましょう。

みずほラップファンドは、日本株式アクティブファンド、外国株式アクティブファンド、グローバルREITインデックスファンド、日本債券アクティブファンド、外国債券アクティブファンド(為替ヘッジ)、ヘッジファンドの6マザーファンドを通じて分散投資するバランスファンドです。なかでも株式のマザーファンドはいずれも変動抑制型のポートフォリオを構成しており、ファンド全体でもリスクを抑えた運用を目指すというのが売りのようです。

ところが費用を見て驚きました。購入手数料こそありませんが、信託報酬はなんと年率2.052%(税込)。驚愕の高コストです。しかも信託期間は2025年3月19日まで。まったく意味が分かりません。そもそも、いくらリスクを抑えたポートフォリオを組んだとしても、年2%を超えるような信託報酬を取られたのでは、あまりにも確定したマイナスが大きく、まともなリターンなど期待できません。

しかも、肝心の「ラップ口座のエッセンス」である投資家のリスク許容度に応じたポートフォリオ設定というのも、単に予想リスクの異なる3コースから選ばせるだけ。判定ツールも簡単なアンケートです。はっきり言って子供だましです。とても信託報酬2%の価値があるとは思えません。一応、3コースのスイッチングが可能ですが、実態としては単なるバランス型アクティブファンドに流行の「ラップ」という言葉を付けることで高額な信託報酬を正当化する目くらましにしているといわれても仕方がない。信託報酬の法外さに加えて、ファンド設計自体の志の低さを感じます。

いずれにしても個人投資家は、よく考えないといけません。「ラップ口座というのがあるらしい」「富裕層向けの凄いサービスかも」「ラップ型ファンドなら低額からでもラップ口座のような運用をしてくれるようだ」。こういう思考パターンが金融機関につけ込まれるのです。

「ラップ型ファンド」などという言葉に惑わされるのではなく、それこそ良質のバランス型インデックスファンドを買った方がよほど合理的です。世界経済インデックスファンドeMAXISバランスSMTインデックスバランス・オープンならいずれも信託報酬0.54%です。これら良質のバランス型インデックスファンドを買えば、それこそ資本主義の運動自体による「お任せ型運用」ができるのですから。

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