2015年10月24日

ほとんどが負け組になってしまう毎月分配型ファンド



いろいろと言われながらも日本で販売されている投資信託で根強い人気があるのが、毎月分配型ファンドです。モーニングスターの記事によると、日本株ファンドへの資金流出入は9月までで5カ月連続の流入超過となり、なかでも毎月分配型は過去12カ月間中11カ月で流入超過、累計では7,273億円の流入超過となるなど全体を牽引しています。

5ヵ月連続で流入超過の日本株ファンド、人気を支える毎月分配型の実力(モーニングスター)

ところが、これほど人気の毎月分配型ファンドですが、過去3年間のトータルリターンを比較すると、約7割が全ファンドの下位50%に沈んでいるとか。ようするにほとんどのファンドが負け組になっているということです。私は別に毎月分配型ファンドの存在自体を否定はしませんが、厳然たる事実として“あまり儲からない”ということがよくわかります。

よく毎月分配型ファンドの優位性を主張する人もいるのですが、そのほとんどが特殊な環境やタイミングを前提とした理論構成になっています。相場にはあらゆる局面が含まれていますから、たしかに毎月決算することで分配金を受け取った方が無分配よりもトータルリターンがよくなる場面もあるはずです。ただ、それは特殊な局面であって、普遍性はありません。ある程度の時間軸で比較してみると、やっぱり毎月分配型で儲けるのは難しいということがモーニングスターの記事でよくわかります。これは、客観的なデータに基づく事実ですから、理屈ではありません。

よく考えると、これはあたり前の話です。毎月分配型の場合、含み益がある段階で出る普通分配金には20%課税されますし、含み損の状態で出る特別分配金は元本の取り崩しですから、投資額自体が減っています。基準価格が上昇しているときは税金を取られ、下落しているときは事実上、投資資金を引き揚げているわけですから投資効率が低下してリターンが悪化するのは当然のことでしょう。

さらにモーニングスターの記事は重大なことも指摘しています。それは毎月分配型ファンドの中でも、カバードコール戦略などオプション取引を組み込んだ2階建て・3階建て、あるいは4階建て投信の危険性です。記事には次のように書かれています。
人気の一角を占めるカバードコール戦略は、原資産である日本株が「あまり大きく変動しない」、もしくは「小幅に下落する」と予想される時に有利な戦略であり、価格が大きく振れた場合には逆に不利となる可能性がある。モーニングスターの調べでは、日本株のうち、カバードコール戦略を採用するファンド(※4)の%ランクは、2015年9月末時点ではトータルリターン1年は13本の全てが70%以上(下位30%内)、トータルリターン3年は6本の全てが90%以上(同10%内)と、相対的な劣後幅はかなり大きい。
(※4)モーニングスターのファンドコメント内に「カバードコール」、「オプション(の)プレミアム」のいずれかを含むファンド
「トータルリターン1年は13本の全てが70%以上(下位30%内)、トータルリターン3年は6本の全てが90%以上(同10%内)」とは酷い。思い返せば8月以降、日本株だけでなく全世界の株式のボラティリティーが高かった。カバードコール戦略を採用しているファンドは大変なことになると思っていましたが、案の定、そうなってしまいました。しかもトータルリターン1年よりもトータルリターン3年の方が成績が悪化しているというのも注目です。カバードコール戦略が失敗するほとんどのパターンは、コツコツとプレミアム収入を重ねながらも、相場が一瞬でも思惑と反対方向に動くとドカンと損してしまうこと。まさにそのパターンに嵌ってしまっているのでしょう。

全般的に毎月分配型ファンドは信託報酬も高い。カバード戦略を組み込んだファンドに至ってはびっくりするような水準のものもあります。おまけに購入手数料が必要なファンドも多い。それだけ大きなコストを支払って、ほとんどが負け組になるファンドを買っているようでは投資家としても立つ瀬がありません。それなのに、あいかわらず売れ続けているというのも不思議なものです。こうなってくると、もう商品が悪いというよりも、そんな商品を買う消費者が悪いといわれてもしょうがない。じっさいに金融機関は、そう思っているのではないでしょうか。だとすると、日本の投資家もなめられたものです。

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