2015年12月12日

三井住友トラスト・アセットマネジメントが低コスト競争に動く-日経225インデックスe(信託報酬0.19%)を追加設定



何人ものインデックス投資ブロガーさんに教えてもらったのですが、三井住友トラスト・アセットマネジメントが低コストインデックスファンドシリーズである「インデックスe」シリーズに新たに日経平均株価に連動する日経225インデックスeを2016年1月8日に追加設定するそうです(参照:投信総合検索ライブラリー)。信託報酬(税抜)は驚きの年0.19%。これは、DIAMのたわらノーロード日経225(信託報酬<税抜>0.195%)をも下回り、日経平均株価をベンチマークとするインデックスファンドでは国内最安値となります。

日経225インデックスe(信託報酬最安0.19%)がインデックスeシリーズに1月8日に追加(インデックス投資日記@川崎)
信託報酬0.19%の日経225インデックスeが設定~手数料競争参入がSMTシリーズでない理由(ホンネの資産運用セミナー)

最近では三井住友アセットマネジメントやニッセイアセットマネジメント、DIAMアセットマネジメントなどにインデックスファンドの低コスト競争ですっかりとお株を奪われてしまった感のある三井住友トラストAMですが、やっぱり黙っていませんでした。まずはインデックスeシリーズを使って動き出したということです。こうした動きが他の運用会社にどのように波及するかも含めて、非常に楽しみになってきました。

インデックスeは、中央三井アセットマネジメントが運用していた低コストインデックスファンドシリーズでした。中央三井AMが住信アセットマネジメントと合併して三井住友トラスト・アセットマネジメントとなって以降、三井住友トラストAMが旧住信AMが運用していた低コストインデックスファンドシリーズであるSMTシリーズ(旧STAMシリーズ)を前面に打ち出すようにあり、どちらかというと地味な商品となっていました。ただ、商品のポテンシャルは非常に高く、古参のインデックス投資家のなかには愛用者も少なくありません。私自身も国内債券ファンドはインデックスeを積み立てています。

これまでインデックスeには日経平均株価をベンチマークとする商品はなかったのですが、あえてここでその商品を信託報酬(税抜)年0.19%という超低コストでぶち上げてきたことには、いろいろと考えさせられるものがあります。ひとつは三井住友AMによる確定拠出年金専用ファンドの一般販売開放やニッセイAMによる<購入・換金手数料なし>シリーズの信託報酬大幅引き下げ、そしてDIAMによる超低コストインデックスファンドシリーズ「たわらノーロード」の登場といった最近のインデックスファンドの低コスト競争に対して、三井住友トラストAMとしても参戦するという明確な意思を示したということです。これは非常に大きなことです。

もうひとつ興味深いのは、三井住友トラストAMがSMTシリーズではなくインデックスeを低コスト競争参戦の先鋒として繰り出してきたことでしょう。この点に関して、「ホンネの資産運用セミナー」管理人であるゆうきさんの指摘が的を得ていると思います。
ただ、SMTインデックスシリーズは、店舗型の銀行や証券会社でも販売されている一方で、インデックスeシリーズはネット証券のみでの販売である。SMTインデックスシリーズの信託報酬において、販売会社の取り分を大幅に引き下げるのは困難を伴うことが想定される。インデックスeシリーズに目を付けたのは、そんな背景がありそうだ。
これは私もつねづねブログで指摘してきましたが、投資信託のコスト引き下げのカギを握るのは販売会社です。信託報酬を委託会社(運用会社)、受託会社(信託銀行)、販売会社(証券・銀行)で分け合っている構造上、いくら運用会社が頑張って信託報酬を引き下げようとしても、販売会社が同様に報酬引き下げに応じない限りは不可能なのです。ただ、すでにネット専業証券は報酬引き下げに応じるようになっています(だからニッセイAMは<購入・換金手数料なし>シリーズの信託報酬を引き下げることができました)。だから、まずはネット証券で販売しているインデックスeを活用して低コスト競争に参入したのでしょう。

いずれにしても、低コストインデックスファンドの古豪であるインデックスe、そしてこれまでインデックスファンドの低コスト化を主導してきた三井住友トラストAMがあらためて低コスト競争に参入してきた意義は大きい。なぜなら、すでに実績のある低コストインデックスファンドシリーズも、さらなる信託報酬引き下げが実施される可能性があることを示したからです。恐らく現在、低コストインデックスファンドで実績のある運用会社は、新たな次元に突入したコスト競争に対応するために動いているのでしょう。それはおもに販売会社との交渉ではないでしょうか。販売会社が報酬の引き下げに応じれば、既存の低コストインデックスファンドシリーズも信託報酬が大幅に引き下げられる可能性が出てきたように思います。その意味では、今回の日経225インデックスeの設定というのは、三井住友トラストAMが販売会社に対して放った牽制球のようにさえ思えます。

いずれにしても他の運用会社への影響も含めて面白いことになってきました。2015年は後半にインデックスファンドを取り巻く環境が大きく変わり、とくにコスト面では風景が変わってしまったのですが、どうやらその動きは2016年にも続きそうです。ある意味では、来年がインデックスファンドのコスト革命の本番なのかもしれません。そして、やはりそのカギを握るのは販売会社の判断でしょう。だから、改めて強調したいのは、運用会社が販売会社に報酬引き下げを要請した場合、販売会社はそれを受け入れる義務があるということ。それがフィデューシャリー・デューティーを果たすことになるからです。
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