2016年6月10日

マネックス・セゾン・バンガード投資顧問は自己矛盾に陥っていませんか?



マネックスグループ、クレディセゾン、バンガードの3社合弁によって設立された投資一任運用会社、マネックス・セゾン・バンガード投資顧問のサイトがリニューアルされました。まだ具体的なサービス内容は明らかにされていませんが、運用商品の一部は公開されています。低コストなラップ口座を作るという触れ込みでスタートしたマネックス・セゾン・バンガード投資顧問に対してこのブログでも注目してきました。
【関連記事】
マネックス・セゾン・バンガード投資顧問は良質のラップ口座を提供できるか

ところが、どうも風向きが怪しい。運用商品としてMSV内外ETF資産配分ファンドが設定されていますが、これも意図がよく分からない不思議な商品です。さらにサイトにある運用哲学の部分を読んでますます首をかしげました。やはり意味が分からないことが書いてあるからです。運用商品と運用哲学を並べてみると、なんだか自己矛盾に陥っているような感覚を覚えました。このモヤモヤ感、なんなんでしょうね。

マネックス・セゾン・バンガード投資顧問がラップ口座専用ファンドとして設定したMSV内外ETF資産配分ファンドは、国内外の様々なETFにファンド・オブ・ファンズ(FoF)形式で投資するバランスファンドです。ポートフォリオ配分は市場環境に応じて決定するとしていますから、いわゆるフレキシブルアロケーション型のバランスファンドといえるでしょう。ただ、AコースからHコースまで8本のファンドが用意されているのに、その違いが目論見書を読んでもさっぱり分からない。

また、コスト体系も残念な内容です。信託報酬が年0.825%(税抜)。これに投資対象であるETFの運用管理費用として年0.15%程度がかかりますから、実質負担は年0.975%程度(税抜)となります。いくらフレキシブルアロケーションファンドとはいえ、低コストなETFに投資するバランスファンドとして、これってちょっと高くないですか? 例えば、やはり市場動向に応じて資産配分を見直すDIAMアセットマネジメントのマネックス資産設計ファンド〈育成型〉は、信託報酬が年0.95%(税抜)です。

しかもMSV内外ETF資産配分ファンドはラップ口座専用ファンドなので購入にはマネックス・セゾン・バンガード投資顧問と投資一任契約を結ぶ必要があります。ラップ手数料をどうするつもりなのでしょうか。もし、ラップ手数料が無料だというのなら、まだ許容できるコスト水準です。しかし、ある程度のラップ手数料が必要なら、百凡のダメなラップ口座とたいして変わらない高コストなサービスとなります。

意味不明な記述が目立つ運用哲学


サイトに記載されている運用哲学にも次のような意味不明な記述がありました。
当社は、投資の本質は、長期的視点に立てば “ゼロサム・ゲーム”であり、各種コストを考慮すれば“マイナスサム・ゲーム”であると考えています。従って、資産運用においては、いかに低コストで最適な運用ポートフォリオを構築できるかが重要です。
マネックス・セゾン・バンガード投資顧問は、出資会社のひとつであるバンガード・グループの知見も活用し、世界中の低コストのETFや投資信託を用いて運用ポートフォリオを構築するなど、徹底したコスト管理を行い、投資家が享受する運用リターンを最大化するよう全力を尽くしてまいります。
思わず「これは驚いたね」といわざるを得ません。投資の本質が長期的視点に立てば“ゼロサム・ゲーム”だというのは、どういった理論的背景から導き出された結論なのでしょうか。かりに、投資がゼロサム・ゲームなら、“投資しない”ことが資産形成・運用の最適解となる可能性があります。でも、それって運用会社として一種の自己否定では。さすがにこれは変だということで、Twitterなどでも話題になったほどです。

それで、投資はゼロサム・ゲームであり、各種コストを考慮すればマイナスサム・ゲームなのだから「徹底したコスト管理」を行うと主張しているのですが、その結果が実質負担年0.975%程度(税抜)のMSV内外ETF資産配分ファンドです。うーん、これはちょっと寂しい。なんとなく言っていることとやっていることが矛盾しているような。

まあ、まだラップ口座の具体的なサービスは準備中ということなので、あまり断定的に厳しいことは言いにくいのですが、なんともいえないモヤモヤ感がぬぐえません。会社設立の際にはマネックスグループの松本大社長が記者会見まで開き、「他のラップサービスに比べてはるかに安くする」と断言していたので、これからいろいろと動きがあるのかもしれません。

そんなわけで、ちょっといろいろな意味で今後もマネックス・セゾン・バンガード投資顧問の動きに注目したいと思います。

【蛇足】
直接比較はできませんが、マネックス・セゾン・バンガード投資顧問の商品ラインアップの中身を見てしまうと、同じくバンガードの商品に投資するセゾン投信のセゾン・バンガード・グローバルバランスファンドが、とても良心的な商品だったということを改めて感じてしまいました。

関連コンテンツ