2016年10月3日

投資で最も大切なことはリスク資産と無リスク資産のウエート管理



定期的に日本では投資ブームが起こるのですが、なかなか定着しません。とくに長期投資は相場環境が悪くなると、すぐに退場者が出て「やっぱり投資は難しい」という話になってしまいます。なぜ投資が難しいのでしょうか。それは「投資は余裕資金でやらなければならない」という大原則の意味を厳密に捉えていないからでしょう。これは心構えの問題ではありません。もっと厳密にリスク資産と無リスク資産のウエートを管理し、常にリスク資産のウエートが自分のリスク選好とリスク許容度の範囲内に収まるようにコントロールしなければならないということです。実際、私はリスク資産のポートフォリオ配分などはかなり大雑把な管理しかしていませんが、リスク資産と無リスク資産のウエート管理には常に気を配っています。そして、これさえしっかりとできていれば多少の含み損も気になりません。そうなれば、投資はぜんぜん怖くなくなる。それこそ投資したことなんか忘れて、南の島にでも遊びに行けるのです。

インデックス投資などを始める際、最初に考えなければなならないのはアセット・アロケーションだといわれます。これは正しいのですが、重要なのはアセット・アロケーションの決定は、自分の全資産をベースに考えなければならないということ。だから、リスク資産のポートフォリオの中身を考えるよりも先に、いったい全資産の何%までリスク資産に投じることができるのかを決めることです。それがリスク選好やリスク許容度の範囲内で投資するということであり、「投資は余裕資金でやらなければならない」という意味です。

もちろん人によってリスク選好やリスク許容度は異なりますから、どれぐらいのウエートでリスク資産と無リスク資産を持つべきかという最適解はありません。よく「生活防衛資金として生活費の2年分を無リスク資産で持っておく」ということが提唱されますが、これは最低限ラインの話でしょう。実際は無リスク資産が生活費2年分だけで、残りをすべてリスク資産に投じることができるのは、かなりリスク選好・リスク許容度ともに高い人だけだと思います。

私自身は、リスク資産と無リスク資産のウエートが50:50となるのをベースに管理しています。これはあくまで基準ですから、実際はリスク資産の値動きや貯金の増加に合わせて変動していきます。ちなみ2016年10月段階でのリスク資産と無リスク資産の割合は次のようになっています。



無リスク資産は、現預金56%と個人年金保険2%の計58%。リスク資産は、個別株・ETF・投資信託37%と個人型確定拠出年金(すべてリスク商品で運用中)5%の計42%です。ちなみに投資信託や個人型確定拠出年金に含まれる国内債券インデックスファンドもリスク資産にカテゴライズしています。保有はしていませんが、個人向け国債は現預金同様に無リスク資産に算入することになります。

偉そうに投資ブログを書いているわりには、それほどハイリスクなアセット・アロケーションにはなっていません。あくまで自分のリスク選好とリスク許容度に応じて楽しく投資を続けることのできる配分というだけです。しかし、世間一般から見れば、これでもかなりハイリスクなアセット・アロケーションだということを忘れてはいけません。それぐらい「投資は余裕資金でやらなければならない」という原則は重いのです。


投資のリスク量は無リスク資産のウエートで調整するもの


リスク資産と無リスク資産のウエートを管理しなければならない理由は、投資におけるリスク管理とは常に全資産のアセット・アロケーションで考えなければならないからです。リスク資産の値動きや損益が実際に自分の全資産にどの程度影響を及ぼしているかということをいい加減に考えてはいけない。投資においてリスク量の管理は、基本的にリスク資産と無リスク資産のウエートによって調整するべきものであって、リスク資産のポートフォリオ配分を考えるのは、その後のことです。

例えば私の場合、リスク資産と無リスク資産の比率が50:50です。ここで相場の暴落があってリスク資産が20%減ったとしましょう(実際によくあるレベルです)。大変な損失のように思えますが、無リスク資産を含めたアセット・アロケーション全体では10%の減少となります。これなら自分のリスク選好・リスク許容度ともに耐えることのできるレベルです。リスク選好・リスク許容度の範囲で投資するとは、こういうことです。それが「投資は余裕資金でやらなければならない」という厳密な意味でしょう。

結局、投資していて損失が出たり含み損になったりしたときに苦しくなるのは、まず第一にリスク資産の数字ばかり見ているからというケースが少なくありません。全資産のアセット・アロケーションから見れば、大した損ではないかもしれないのに。あるいは資産全体で見ても苦しくなるような損失ならば、そもそも最初のアセット・アロケーションの決定が間違っていた。もっと無リスク資産のウエートを上げるべきなのです。

だから、アセット・アロケーションの決定とは、まずは自分のリスク選好・リスク許容度に収まるリスク資産と無リスク資産の比率を決定するにほかなりません。もちろん、これは実際に投資を始めてみて、損失を体験しないと実感としてわかりません。だからこそ、投資はまず少額からスタートするべきという先人の教えは貴重。少額から始めて、徐々にリスク資産のウエートを高めていけば、自分にとって心地よいアセット・アロケーションが分かってきます。

ちなみに、積立投資が投資初心者に向いている理由のひとつがここにあります。自分のリスク選好・リスク許容度が分からないうちに一括投資すると、相場が不調になったときに予想外の損失が生じて、不意に自分のリスク選好・リスク許容度を超えて狼狽してしまう場合があります。最悪の場合、市場から退場してしまい「投資は怖い」と言いだす。でも、実際は投資が怖いのではなく、その投資家が準備不足だったのです。その点、積立投資なら相場の変動を体験しながら、徐々にリスク資産のウエートを高めていくことになりますから、自分のリスク選好・リスク許容度を確認しやすいのです。

リスク過剰を回避しながら自然なリバランスも可能に


アセット・アロケーションの管理で、リスク資産と無リスク資産のウエートをコントロールすることが大事であるもう一つの理由は、これによって知らないうちに自分のリスク選好・リスク許容度に対して実際のアセット・アロケーションがリスク過剰になるのを回避できるからです。

相場環境が好調だと、ついつい上げ潮に乗り遅れまいと投資を急いでしまうのは人情です。ところが、これが投資の落とし穴で、思わぬ高値掴みになってしまうことが少なくありません。そこで相場が好調な時ほどリスク資産と無リスク資産のウエートをよく観察する。相場が上昇しているときは保有しているリスク資産もどんどん値上がりしますから、自分が考えている以上にアセット・アロケーションに占めるウエートが大きくなっているはずです。これが確認できれば、余計な追加投資はぐっと我慢して、結果的にリスク過剰になるのを回避できるのです。

逆に相場が下落しているときは、やはり驚くほどのスピードでアセット・アロケーションに占めるリスク資産のウエートが下がっていきます。あまりに基準となるウエートから乖離すれば、そこでおもむろに追加投資すればいい。自然なリバランスとして追加投資できますし、結果的に良いタイミングで投資できたとなる可能性もあります。これもやはりリスク資産と無リスク資産のウエートをコントロールするメリットです。

いまだに日本では「投資は怖い」と言われるわけですが、きちんとしたリスク管理さえできていれば、投資はぜんぜん怖くありません。そして、リスク管理の肝が無リスク資産のウエートです。無リスク資産こそ、個人投資家を相場の荒波から守ってくれる最後の防波堤なのです。そして、無リスク資産を自由なウエートで持てることこそ、個人投資家の特権でもあります。なぜなら、プロ投資家は手数料をとって他人の資金を運用している以上、無リスク資産を持つことは原則として許されません(手数料の存在意義を問われます)。ここに個人投資家がプロ投資家に対して長期では勝つ可能性も秘められているのです。

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