2016年12月20日

金融機関よ、時代は変わったのだよ―FOY2016懇親会に金融庁の人がやってくる



来年1月14日に恒例の「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2016」の授賞式が開催されます。今回は「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2016懇親会」も開かれることになっており、私は両方とも参加する予定なのですが、ここにきて凄い情報が明らかになりました。なんと懇親会に金融庁の人が参加するというではありませんか。

お知らせ(金融行政関係者の参加について)(投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2016懇親会)

はっきり言ってビビりました。なにがビビったかというと、いまだかつて個人投資家の自主的な集まりに、金融庁がスタッフを派遣してくるなどといったことは寡聞にして知らないからです。でも、もっとビビったのは恐らく金融機関の人たちでしょう。驚くべきことに金融庁がわざわざ市井の個人投資家と直接コミュニケーションをとろうとしていることが明らかになったわけですから。これは金融機関と個人投資家の力関係を一変させる可能性を秘めています。だから、金融機関は個人投資家に対する態度を改めざるを得なくなるかもしれない。そうです、金融機関よ、時代は変わったのだよ。

「お知らせ」によると、FOY2016懇親会に金融庁のスタッフが参加し、2018年1月から始まる予定の積立NISAについて話をするそうです。ただ、当然ながらそれ以外にも個人投資家との間で意見交換が行われることでしょう。そもそもイベントに参加している人は日本の金融・運用業界の在り方について一家言ある人が多いですから、相当踏み込んだ内容の意見が出てくるかもしれません。

個人投資家と金融庁が直接対話するなどということは、金融機関からすれば気が気でないかもしれません。なぜなら、最近はだいぶマシになりましたが、これまで日本の金融機関は個人投資家に対してひどい仕打ちを重ねてきたから。いまだにボッタクリ商品のハメ込み営業はなくなっていません。だから心ある個人投資家は、いまでも金融機関に対して色々と思うところがあるのです。

そういった個人投資家の思いが直接に金融庁にもたらされた場合、金融機関からすればリアクションが予想不可能ですから、まったく気が気でないはず。しかも最近の金融庁の行政方針は特異なほど先鋭化しているだけになおさらです。

それにしても、なぜ金融庁はわざわざ市井の個人投資家の集まりに人を派遣までして直接対話しようとしているのでしょうか。やはりそれは、金融庁が“フィデューシャリーデューティー”ということに重きを置いているからとしか言えません。金融機関にフィデューシャリーデューティーを求める以上は、金融庁もまた個人投資家の利益を専らに考えなければならないということです。そのためには、やはり個人投資家が実際に何を求めているのかを直接対話によって掘り起こそうとしているのかもしれません。

まさに時代が変わったのです。もはや金融機関にとって個人投資家は、商品を販売するときにだけ向き合う相手ではなくなった。少なくとも金融庁は、金融機関がもっと個人投資家と正面から向き合うことを求めている。だからこそ、金融庁自身もまた個人投資家との直接対話に踏み切ったと考えるべきです。そういう時代の変化に対して鈍感な金融機関は、これからやっていけなくなるというメッセージでもあります。

そんなわけで、今回のFOY2016懇親会が非常に楽しみ。私としてもぜひ金融庁の人と色々な対話を試みてみようと思います。

【追記】
水瀬ケンイチさんに教えてもらったのですが、金融庁はこれまでも個人投資家との対話を一部で進めていました。やはり私が想像していたよりも早く、時代は変わろうとしていたのです。

投信ブロガー、金融庁へ!?(梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記))
日本版ISA勉強会に参加しました(セルフ・リライアンスという生き方)

【関連記事】
金融庁が現在の日本の投資・運用業界についてどのような認識を持っているのかは、『週刊エコノミスト』2016年7月26日号に掲載された森信親長官のインタビューが示唆に富みます。

『週刊エコノミスト』2016年7月26日号は“買い”だ―森信親金融庁長官のインタビューは必読

また、近年の金融庁の動きで特徴的なのは、金融機関ではなく金融のエンドユーザーとの対話から日本で本質的に求められている金融ニーズを引き出そうとする姿勢です。融資業務関連でも全国の中小企業へのヒアリングを実施し、それをベースにした行政監督方針が強硬に打ち出されました。この辺りの事情は橋本卓典『捨てられる銀行』が参考になります。

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