2016年9月20日

労働組合幹部は3級FP技能士程度の知識を持たなければならない



来年1月から個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入資格者が拡大されることで金融機関の競争が激しくなってきました。楽天証券の参入に続いて、損保系でも損保ジャパン日本興亜アセットマネジメントが低額の手数料でiDeCoに参入するとか。東京海上日動火災保険も運営管理手数料の値下げを検討しているそうです。

個人型確定拠出年金の手数料半額に 損保ジャパン(「日本経済新聞」電子版)

こういう健全な競争によるコスト引き下げが起こることは消費者としてありがたいことです。一方、ここにきて気になることも。企業型DCのコストが高止まりしているのではないかという問題です。企業型DCは加入者以外には実態もよく分からないので、あまり話題にならないのですが、Twitterなどでやり取りしている人からの情報によると、商品ラインアップなどにかなり問題があるプランも少なくなさそうです(とくに地銀と損保のプランの評判が悪い)。個人型DCなら加入者は自由に金融機関を選ぶことができますが、企業型DCはそういうわけにはいきません。こういう問題に対してどのように対処すればいいのでしょうか。この点に関して私は、DCプラン導入の意思決定に参画する労働組合(組合が無い企業の場合は従業員代表)の責任が重いと考えます。だから、労組幹部は一定の金融リテラシーを持たなければななりません。最低でも3級FP技能士程度の知識を持つべきなのです。
2016年9月18日

これからは「iDeCo」と呼ぶよ―2016年9月の個人型確定拠出年金積立と運用成績



確定拠出年金普及・推進協議会などが募集していた個人型確定拠出年金(個人型DC)の愛称が「iDeCo」に決まりました。

個人型確定拠出年金制度愛称募集キャンペーン(確定拠出年金普及・推進協議会事務局)

英語表記のindividual-type Defined Contribution pension planの単語の一部を使って作った言葉だそうです。いろいろな感想があるようですが、個人的にはなかなかカッコいい愛称だと思います。ということで今回からこのブログでも個人型DCのことをiDeCoと呼んでいきたいと思います。9月もSBI証券で積み立てているiDeCoが無事に約定していました(8月拠出分)。ここにきて海外株式がちょっと下げている影響で、拠出来リターンは-2.17%となっています。
2016年9月17日

金融庁は「金融処分庁」から「金融育成庁」への転換を目指す―「平成27事務年度 金融レポート」は一読の価値あり



このほど金融庁が「平成27事務年度 金融レポート」を発表しました。

平成27事務年度 金融レポート(金融庁)
平成27事務年度 金融レポートの主なポイント(同)

ここ数年、非常に精力的な活動が目立つ金融庁ですが、今回の金融レポートの内容も一読してちょっと驚きました。現在の日本の金融・運用業界の問題点・課題と対応策を微に入り細に入り分析しています。日本の金融機関が将来的に収益確保が困難になる危険性を孕んでいることを指摘しつつ、その対応策として「顧客本位の業務運営を通じて、資産規模をコントロールしつつ、国民の安定的な資産形成に資する良質な金融商品の販売等を進めることは、金融機関自らのより安定的な収益基盤の構築にもつながる」と強調しています。そして、国民に対して投資教育の必要性を指摘し、さらに資産形成のための国際分散投資の普及の必要性を示唆する内容になっています。そのために金融庁自身の改革の必要性にまで踏み込み、従来の「金融処分庁」から「金融育成庁」への転換を目指すと宣言しました。まったくもって立派なレポートだと感心。金融機関にとって必読の文献であると同時に、国民にとっても一読の価値がある文書となっています。
2016年9月15日

"投資で儲ける=他人を出し抜くこと"という発想が投資詐欺を引き寄せるのでは



あいかわらず投資詐欺事件が定期的に起こっています。最近も日経225先物で運用すると謳って資金を集めながら、実際は運用せずに配当に回すという典型的なポンジスキーム事件が起こりました。事件自体はありふれたものなのですが、ちょっと驚いたのが被害者の面々。なんでも江角マキコさんや布袋寅泰さん、そしてGACKTさんも被害に遭っていたそうです。

先物投資詐欺の疑いで会社役員ら逮捕 113億円集金(「日本経済新聞」電子版)
投資詐欺で47歳男再逮捕 江角 マキコさん、GACKTさんらも被害(FNN)

とくにGACKTさんはテレビでは本物を見抜くセレブ系キャラで売っていただけに、投資詐欺に遭うというのは何とも言えない微苦笑を誘います。それはまあ冗談として、不思議に思うのが、日本では投資という行為自体はあまり一般的ではないのに、投資詐欺事件だけは一人前に頻発するということ。なぜなのかいろいろと考えていたのですが、ふと思ったのは、"投資"という行為に対する認識がどこかずれている人が多いからではないでしょうか。つまり、"投資で儲ける=他人を出し抜くこと"と思い込んでいるケースがある。そういった認識が詐欺師を引き寄せるし、ついつい詐欺師の甘言を信じてしまう土壌になっているような気がします。
2016年9月12日

貸株サービスが嫌いな理由―金融機関の信用リスクは意外と身近だぞ



ネット証券を中心に提供されているサービスに「貸株サービス」あるいは「預株」というものがあります。文字通り投資家が証券会社に保有株式やETFを貸すことで一定の金利収入を得るというものです。例えば私がよく使っているSBI証券は日本株・ETFだけでなく、米国株・ETFに関しても貸株サービスを開始することになり、ちょっとした話題になっています。

貸株サービスについて(SBI証券)
本邦初!「米国貸株サービス」提供開始のお知らせ(同)

貸株サービスは、投資家が長期保有する銘柄や塩漬けしている銘柄を証券会社に貸し出すだけで、配当だけでなく貸株金利からも収入を得られるわけですから、非常にお得なサービスに思えるかもしれません。でも、私は昔から貸株サービスが嫌いで、まったく利用したいと思いませんでした。その理由は、貸株サービスは金融機関の信用リスクを全面的に負うものだからです。そして、金融機関の信用リスクというものは、意外と身近なものだと感じているのです。

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