2016年2月22日

みずほFGが「フィデューシャリー・デューティーに関する取組方針」を発表ーついにメガ金融グループの一角が動いた!



このほど、みずほフィナンシャルグループが「フィデューシャリー・デューティーに関する取組方針」を発表しました。

<みずほ>のフィデューシャリー・デューティーに関する取組方針について(みずほフィナンシャルグループ)

これはスゴイことです。これまでHCアセットマネジメント、セゾン投信、三井住友アセットマネジメント、東京海上アセットマネジメントがフィデューシャリー宣言を公表してきましたが、いずれも運用会社単独での宣言でした。しかし、ついにメガ金融グループの一角であるみずほFGがグループとしてフィデューシャリーデューティーについての取組方針を明らかにしたわけです。これにより、グループ傘下のみずほ銀行、みずほ信託銀行、みずほ証券、みずほ投信投資顧問、新光投信、DIAMアセットマネジメントなどグループ各社もフィデューシャリーデューティーを遵守した事業運営を実行することを宣言したことになる。これは画期的なことです。

みずほFGによる今回の「フィデューシャリー・デューティーに関する取組方針」の公表が、どれほどインパクトにあることなのかは、普段は金融機関に対して厳しい批判を繰り返している森本紀行さんのブログを読んでも分かります。

すごいぞ、みずほ、資産運用改革の旗手になれ(「森本紀行はこう見る」HCアセットマネジメント)

私もこれまでフィデューシャリーデューティーの重要性についてはたびたびブログで書いてきましたが、まさかメガ金融グループが、グループを挙げてフィデューシャリーデューティーへの取り組みを明言するとは思っていなかったので衝撃を受けています。

取組方針を読んで、とくにスゴイと思ったのがグループ会社間の取引と受益者の利益相反の問題を明確に認識していることです。みずほFGのようなメガ金融グループの場合、この点がフィデューシャリーデューティーのキモになる。ここでははっきりと
資産運用関連業務におきましても、持株会社とグループの運用会社、グループの販売会社と運用会社との間の適切な経営の独立性確保に向けた態勢を構築します。
と明言した。当たり前のことのように思える内容ですが、いまだかつてこの当たり前のことを明言した日本の金融グループはありません。だからこそ画期的です。

さらに「販売」「運用・商品開発」「資産管理」の各機能ごとに対応方針が明確にされており、ここでは手数料水準の合理性、受益者の立場に立った商品提案などが定められています。ここに書かれていることを実行するということは、みずほFGとして従来の事業の在り方から180度方向転換するといってもいいぐらいの内容です。

また
「<みずほ>のフィデューシャリー・デューティーに関する取組方針」に基づき、グループ各社において実践に向けた具体的なアクションプランを策定・公表するとともに、コンプライアンス部門はその遵守状況について取締役会等に定期的に報告を行います。
と明言した点も評価できます。なぜなら、フィデューシャリーデューティーとは努力義務ではなく、強制力を伴う行動規範だからです。その評価はつねに「実行した」か「実行できなかった」かという点からのみ評価される。みずほFGとしても、各グループ会社を、その点からのみ評価するとしているわけで、やはり画期的です。

実際にグループ会社が具体的なアクションプランを公表しています。

みずほ銀行の「フィデューシャリー・デューティーの実践に向けた取組方針」について(みずほ銀行)
みずほ信託銀行の「フィデューシャリー・デューティーの実践に向けた取組方針」について(みずほ信託銀行)
みずほ証券の「フィデューシャリー・デューティーの実践に向けた取組方針」について(みずほ証券)
みずほ投信投資顧問の「フィデューシャリー・デューティーの実践に向けた取組方針」について(みずほ投信投資顧問)
新光投信の「フィデューシャリー・デューティーの実践に向けた取組方針」について(新光投信)
「フィデューシャリー・デューティーの実践に向けた取組方針」について(DIAMアセットマネジメント)

じつに壮観です。これだけの金融機関・運用会社が、今後は受益者の利益を第一に事業を運営していくことを明確に宣言した。日本の運用業界の在り方を根本的に変えてしまう可能性を秘めるほどインパクトがあります。みずほFGが、受益者の利益を第一にすることが、自社の長期的な、持続的な利益につながるという金融機関として当たり前の認識に至り、実際に行動しようとしている。だから今回の取組方針について、森本紀行さんも次のように解説しています。
フィデューシャリー・デューティーの実践とは、金融機関の経営姿勢において、短期的な利益の追求から中長期的企業価値の追求への転換を促すことにほかなりません。
例えば、販売会社の利益主導で作られたとしか思えない投機的で奇抜な投資信託でも、それが売れているという事実は、顧客からの信頼を前提にしないわけにはいきません。短期的な利益追求とは、その信頼を利用し、最終的に裏切ることであって、持続可能性のないものです。
それに対して、金融機関として、持続的な成長、即ち、中長期的な企業価値の向上を目指すならば、顧客からの信頼を守り、それを、より高度な信頼関係、即ち、フィデューシャリー関係(日本語を充てるとすれば、信認関係)へ高めることで、安定的な取引継続による事業の拡大を図るほうが得であるはずです。
例えば、投資信託についていえば、販売時手数料の増獲を目指し、次ぎ次と奇妙な投資信託を投入しても、裏では、費用が嵩み、また、解約も進むので残高は伸びませんが、真の顧客の利益にかなった投資信託を適正な手数料で販売すれば、残高は伸びて、残高比例報酬が増加する一方、相対的に経費率が改善して、中長期的な利益につながります。
フィデューシャリー・デューティーとは、規制ではなくて、中長期的な企業価値の向上を目指す金融機関のビジネスモデルなのです。
みずほFGの今回の動きに、並々ならぬ本気度を感じました。そう考えると、みずほFGの一員であるDIAMによる低コストインデックスファンド「たわらノーロード」シリーズ設定や、みずほFGがブラックロックと共同開発した低コストインデックスファンド「i-mizuho」シリーズの販路開放と運用期間無期限化といった改革は、いずれもフィデューシャリーデューティーの実行という点から理解できるわけです。つまり、すでに動いているということ。

みずほFGに対する私の印象が劇的に向上しました。今後、みずほFGとの取引を増やそうと思うほどです。なぜなら、みずほFGは受益者の利益を第一に考えるということを具体的に明言した唯一のメガ金融グループだから。みずほFGは、日本の金融グループの中で、まちがいなく一歩前に進みました。

ではほかの金融機関はどうする? とくに残るメガ金融グループである三菱東京UFJフィナンシャル・グループと三井住友フィナンシャルグループ、そしてメガ信託である三井住友トラスト・グループは、このまま座してみずほFGの後塵を拝し続けるのですか? こうしたことを考えれば、今回のみずほFGの行動は、歴史的な意義すら持つように思います。

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