2016年6月8日

攻めのポートフォリオに転換―ひふみ投信の2016年5月の運用成績



インデックス投資家を自認しているのですが、なぜか最近はアクティブファンド関連のネタが多くなってしまいました。まあ、いいでしょう。インデックス投資とアクティブ投資は相互補完の関係ですから、これからも良質なアクティブファンドがあれば応援すると。そんなわけで保有しているアクティブファンドのひとつである「ひふみ投信」の月次運用報告ウオッチです。このほど発行された2016年5月次運用報告書によると、ひふみ投信の2016年5月の騰落率は+3.0%でした。参考指数であるTOPIX(配当込)の騰落率は+2.9%でしたから、わずかですが参考指数をアウトパフォームしました。5月31日段階での純資産残高は318.3億円(前月は303.9億円)、受益権総口数は9,348,282,585口(前月は9,195,096,318口)でした。純資産残高、口数ともに増加しており、順調な資金流入が続いています。また、ここにきてファンドの保有銘柄がかなり入れ替わっており、攻めのポートフォリオへの転換が進んでいるようです。

5月は日銀の追加緩和期待から月半ばから株価は上げていたのですが、結局は追加緩和もなく一時は株価も大きく下げました。ただ、月末にかけて、今度は財政政策への期待から再び株価は上昇し、日経平均株価も1万7000円台を回復して月を終えました(その後、6月に入ってはまたもやグダグダの相場ですが)。

こうしたなか、ひふみ投信はこれまで積極的に組み込んでいた内需関連の好業績銘柄の一部を利益確定したことで参考指数であるTOPIX(配当込)をアウトパフォームする成績を収めることができたようです。ただ、これは単純に利益確定を行ったのではなく、4月から進めていたポートフォリオの改造の一環だそうです。ここにきて守り一辺倒から攻めの要素を加えたポートフォリオを組むとして、最高運用責任者の藤野英人氏は次のように書いています。
今回のポートフォリオ改造の具体的なポイントは設備投資関連企業のウエイトを増やしたところにあります。1〜3月のマクロの統計は企業収益の停滞を示していますが、そのような中でも日本の企業は設備投資を増やしてきています。一方で、機械株などの設備投資関連企業は株価の下落が目立ち、PBR(株価純資産倍率)の指標をみても1倍割れまで低下している会社も見受けられます。会社の資産価値という面からも割安な会社が多く、株価的に下げにくい状態になっている企業が多く存在しています。そのような中で、PBRという観点からも割安性があり、中長期的な視点でも成長性を見出せる企業群への投資を開始しました。
具体的には、SCREENホールディングス、堀場製作所、ニコン、ミスミグループなどが組入れ上位銘柄に顔を出すようになりました。また、市場別比率を見ても東証一部銘柄が80.8%となっており、かつてのポートフォリオからは色合いが変化しています。ひふみ投信といえば中小型株に強いファンドと認識されているわけですが、現在のポートフォリオを見ると大型株の比率も高まっていますから、かなり大胆な戦略転換を進めていることがうかがえます。

実際に今年に入ってからの円高傾向で輸出関連銘柄や設備関連銘柄の株価低迷はひどいものです。業績下振れ懸念が強まっているので、とにかく買いが弱い。そこを拾っていくというのは、投資戦略としてはありです。やはり株というのは“安いときに買う”というのが基本ですから。この戦略転換が今後の運用成績にどのように表れてくるのか。非常に楽しみになってきました(ただし、こうした投資戦略は一種のバリュー株投資ですから、成果が上がるのに時間がかかるということも受益者は知っておく必要があるでしょう)。

さて、月次運用報告書に先立って発表された中間レポート恒例の組入れ銘柄紹介です。今回はヒト・コミュニケーションズ(3654)でした。家電量販店や携帯販売ショップなどの販売・営業業務を請負う「アウトソーシング」事業の企業です。人材派遣業ではなくアウトソーシング(業務請負)業だというのがキモ。業務請負は労働者に対する指揮命令権限が請負企業側にありますから、独自にノウハウを蓄積したり、生産性を高めることができるのです。

米国株組入れについての説明もありました


中間レポートでもうひとつ目を引いたのは、受益者からの質問に答える形で藤野氏が米国株組入れを検討している理由などを説明していたことです。具体的なことは何も決まっていないとしながらも、米国株を組み入れることを検討する理由として2点を挙げています。ひとつ目は「情報入手の容易さや売買のしやすさなどを総合的に考えると、米国は有力候補と言えます。また米国は、最先端の技術やビジネス・アイデアをはじめ世界の情報が集まる場所でもあります」ということ。そして、もう一点の理由として次のように述べていました。
日本と米国の時価総額上位企業を比較したとき、米国の上位企業は、より若く精力的な経営者達がテクノロジーを駆使して世界で戦っています。フェイスブックやアマゾン等が良い例です。そして年率10%や20%といった高い成長を続けています。これまで、ひふみの大型株への投資が少なかったのは、成長性のある会社が少なく投資する魅力に乏しかったためです。しかしTOPIXに勝ち続け、よりよい運用成果をお客様に提供し続けるために、日本の大型株に代わり、高い成長を続ける米国の大型株などへ投資することは合理的ではないかと考えています。
なるほど。マザーファンドの資産総額が大きくなると、どうしても流動性の面から大型株の組み入れを増やさざるを得ないのは、ファンドの宿命ですが、日本には成長性のある大型株銘柄が少ない。そこで米国の大型株に投資することで成長性と流動性を両方とも確保しようという戦略のようです。

ただ、米国株を組み入れて「TOPIXに勝ち続ける」ことを目標とするのは、受益者によっては意見の分かれるところです。このあたりの評価は、やはり受益者がそれぞれ納得も得心もできるかということに帰結するのでしょう(個人的には、ひとつの見識だと納得しています)。いずれにしても、ポートフォリオの組み換えや米国株への投資検討など、ひふみ投信の運用スタイルが今後大きく変化するのかもしれません。それが吉と出るか凶と出るかは分からないのですが、そういった不確実性もまたアクティブファンドの面白さなのですから、楽しみながら見守りたいと思います。

【ご参考】
ひふみ投信は、銀行や証券会社といった販売会社を通さない直販ファンドです。ネットから無料で口座を開設することができます。⇒ひふみ投信

ひふみ投信と同じマザーファンドに投資する「ひふみプラス」はSBI証券 、カブドットコム証券、楽天証券、マネックス証券など主要ネット証券や地方銀行などで買うことができます。
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