2016年6月9日

まともなラップ口座ができるといいですね―ラップ口座専用「たわらノーロード」と楽天証券「楽ラップ」



DIAMアセットマネジメントが低コストインデックスファンド「たわらノーロード」シリーズにラップ専用ファンドを設定するそうです。この手の情報がいちばん早いアウターガイさんが紹介しています。

たわらノーロードがラップ口座向けのラインナップ7本を設定(バリュートラスト)

信託報酬が通常の「たわらノーロード」シリーズよりもさらに引き下げられており、まさに業界最低水準のコストです。それで販売会社がどこなのか有価証券届出書を見てみると、楽天証券となっていました。楽天証券とラップ口座? あ、そういうことですね。

ラップ口座(投資一任型運用サービス)といえば大手証券会社や銀行が非常に力を入れているのですが、じつは楽天証券も4月に金融商品取引法に基づく投資運用業及び投資助言・代理業に係る登録を完了しており、今夏からラップ口座「楽ラップ」のサービス提供を発表していました。

投資運用業及び投資助言・代理業の登録完了 ロボ・アドバイザーを使ったラップサービス”楽ラップ”を開始(楽天証券)

ポートフォリオの作成はロボアドバイザーで行うというのも、いかにもネット証券らしく最近の流行です。まだ正式発表はありませんから断定はできませんが、おそらくラップ口座専用たわらノーロードは楽ラップで販売するのでしょう。

ラップ口座の評価というのは非常に難しいです。基本的に運用を金融機関に丸投げする形になりますから、文字通り“カモ”にされる危険性があるからです。また、大手証券会社や銀行が展開しているラップ口座は、口座手数料が極めて高額であり、おまけに商品ラインアップも不誠実なものが多い。だから、ほとんどの専門家は「ラップ口座は止めておけ」とアドバイスしていますし、私も何度か批判してきました。

ラップ口座が明らかにダメな4つの理由(「山崎元のマルチスコープ」DIAMOND Online)
ラップ口座にご用心!(カン・チュンドのインデックス投資のゴマはこう開け!)

ラップ口座は中身が不誠実すぎる

一方で、ラップ口座という仕組み自体を否定するのも難しい面があります。なぜなら、すべての人が自分でポートフォリオを作成し、それを管理するということは現実問題として難しい。すべての人が自分で投資について勉強できるわけではなく、そもそも勉強したくないという人も多いのですから、そういう人が納得して手間暇をかけない代償として手数料を支払うことを批判すべきではないからです。

だとすると、次善の策として良心的な低コストインデックスファンドをラインアップするラップ口座というのは、十分にありだとおもいます。実際にに三菱UFJ国際投信のeMAXISシリーズは、明確に地方銀行のラップ口座を主要販路と位置付けているようですし、それは高コストなボッタクリファンドをラップ口座で販売するよりは、どれほど良心的なことか。
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そう考えると、楽天証券がラップ口座のラインアップとしてたわらノーロードを選んだことは評価できますし、さらにラップ専用ファンドを一般販売用よりも低コストな信託報酬に設定したDIAMの姿勢は、さらに評価されるべきでしょう。さすが、フィデューシャリー・デューティー宣言をしているだけのことはあります。

あとは、楽天証券が設定するラップ手数料がどうなるかです。ロボアドバイザーの導入でコンサルティングの経費も抑えられるはずですから、ここで極めて低廉な手数料水準が設定されれば、楽ラップは非常に面白い商品になる。

あくまで個人的な印象ですが、評価の基準はラップ手数料を1%までに抑えることができるかだと思う。というのも、ラップ専用たわらノーロードでポートフォリオを組めば、おそらく信託報酬の総額は年0.2~0.3%程度に収まるはず。そこでラップ手数料が1%以内なら、手数料総額は1%強となる。ボッタクリのアクティブファンドが年2%近い信託報酬を取っていることを考えると、ラップ口座で1%強の総コストなら十分に許容できる範囲といえるでしょう。

いずれにしてもまだ憶測の段階なのでなんとも言えないのですが、アウターガイさんも指摘するようにラップ口座でも低コスト化の波が起これば、それはそれで大きな意味を持ちます。少なくともある種の層の人にとって、ベストではないけれども、まともなラップ口座を通じてベターな資産運用の方法が提供されるようになればいいですね。

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