2016年7月24日

ヴォルテールに学ぶ頭の良い人の儲け方



ヴォルテールといえばフランス啓蒙主義を代表する思想家ですが、『寛容論』を書くきっかけとなったカラス事件での振る舞いなど、とにかくカッコいい人なわけです。そのヴォルテール、投資についても面白いエピソードがあります。それこそ頭の良い人の儲け方というのは、こういうものかと感心するような方法でした。

真偽のほどはわからないのですが、ヴォルテールには次のような金儲けのエピソードが伝えられています。
ある時、ヴォルテールは友人の数学者と組んで、国が発行する宝くじの当選確率の計算をし、発行された一回分全部を買うと逆に100万リーヴル儲かってしまうという主催者側のとんでもないミスに気が付いた。そこでヴォルテールは仲間と組み、借金などをしてかき集めた金で宝くじを買い占めた。真相を知った大蔵大臣は即座に賞金の支払い停止を命じ、ヴォルテール一味を詐欺罪で告訴した。しかし、いかに専制時代とはいえ、政府を出し抜いたに過ぎない彼らを罪には問えず、無罪判決が下った。ここで彼らが手にした金額は50万リーヴル。これを現在の日本円に換算すると約5億円ぐらいになる。(引用はウィキペディアから)
普通、借金をして宝くじを買うというのは馬鹿げた行為ですが、ヴォルテールの場合は発行総体ではプラスサムのゲームになっていること(これが主催者のミス)をきちんと数学的な裏付けでもって確認しているところが痛快なエピソードです。

なぜこの話を紹介したのかというと、私がインデックス投資の存在を知ったときにまっさきに思い浮かべたのが、このヴォルテールの金儲けのエピソードだったからです。

個別株投資をしていると、銘柄選択にとても苦労するものです。なかなか自分が買った株が上がらず、保有していない銘柄ばかり上昇するとモヤモヤする。ましてや保有銘柄が値下がりしているのに、保有していない銘柄が軒並み値上がりすると、なんだかハズレくじを引いたような気になるのが人情というものでしょう。

そんなときに、指数に組み込まれている銘柄をすべて買ってしまうインデックス投資の方法を知って「そんな方法があるのか!」と驚きました。それでヴォルテールの金儲けのエピソードを思いだした。ヴォルテールが買い占めた宝くじのように、株式投資がプラスサムのゲームなら、すべての銘柄を買うことは必勝の投資方法だからです。

もちろん、実際のインデックス投資はもっと複雑ですし、そもそも投資に必勝の方法などありません。インデックス投資がすべての銘柄を買うといっても、それはあくまで指数に組み込まれている銘柄だけですから。でも、ある程度の幅広い投資ユニバースのインデックスに投資すれば、“当たりくじ”がたくさん含まれている蓋然性はかなり高い。やっぱり、かなり勝つ可能性の高い投資方法だと思いました。

インデックス投資には、様々な魅力があります。どこに魅力を感じるかはひとそれぞれでしょうが、私は“分散厨”なのでやっぱり幅広い銘柄に分散して投資できるところがいちばん好きです。これは個別株投資では不可能なことですから。ヴォルテールはプラスサムのゲームとして発行された宝くじを買い占めるために借金するなどそれなりに苦労しましたが、インデックス投資ならそんな苦労もないというのはすごいことです。

ただし、ここで問題になるのは、はたして株式投資はプラスサムのゲームなのかということです。でも、この点に関してもあまり心配はしていません。なぜなら、株式投資を存在せしめる大前提である資本主義生産様式というのは、資本の自己増殖に基づくシステムだからです。これはマルクスが『資本論』で証明しています。
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そんなわけで、もし現代にヴォルテールが生きていて、「どんな投資をすれば儲かる可能性が高いのでしょうか」と質問されたなら、頭の良いヴォルテール先生はきっと、「できるだけ幅広い投資ユニバースのインデックスに連動するファンドやETFを買いなさい」とアドバイスするような気がするのです。

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