2016年9月25日

SBI証券と楽天証券の個人型確定拠出年金(iDeCo)を徹底比較―加入者の属性や考え方によってそれぞれに優位性がある



2017年1月から加入対象者が大幅に拡大する個人型確定拠出年金(個人型DC、愛称:iDeCo)を巡ってSBI証券と楽天証券の競争が激しくなってきました。楽天証券が低廉な運営管理手数料と低コストな商品ラインアップで新規参入するのに対し、SBI証券が運営管理手数料の無料キャンペーンと商品ラインアップ拡充で対抗する構図です。両社のプランとも加入者にとって極めて有利なサービス体系となっていますから、これからiDeCoに加入しようと考えている人や、すでに別の金融機関のプランに加入していて、これから移換を検討している人にとって最適な選択肢となっています。よほどのダークホースが登場しな限りiDeCoはSBI証券と楽天証券の2強となりそう。そこで現段階でSBI証券と楽天証券のiDeCoプランを徹底比較します。両プランとも加入者の属性や考え方によってそれぞれ優位性が異なりますから、ひとつの見方として参考にしてください(2017年3月、内容を一部更新)。

運営管理手数料―楽天証券が有利だが、移換ならSBI証券にも優位性


iDeCoに加入した場合、必要な手数料はプランを提供する金融機関に支払う運営管理機関手数料のほか、国民年金基金連合会に新規加入手数料2777円(初回のみ)と事務手数料月額103円、事務委託先金融機関(信託銀行など)への管理手数料月額64円が必要です。このうち国民年金基金連合会と事務委託先金融機関への手数料支払いは全金融機関のプラン共通です。このため重要になるのはプランを提供する金融機関に支払う運営管理機関手数料の違いを比較することです。SBI証券と楽天証券の運営管理機関手数料は次のようになります。

〔SBI証券〕
新規加入手数料:1080円
移換手数料:1080円
運営管理機関手数料:資産残高50万円未満は月額324円、同50万円以上で無料
※キャンペーンとして2017年3月31日までに新規加入・移換した加入者は新規加入・移換手数料とキャンペーン期間中の運営管理機関手数料を資産残高にかかわらず一律無料

〔楽天証券〕
新規加入手数料:無料
移換手数料:無料
他の金融機関、企業型DCへ移換時手数料:4320円
運営管理機関手数料:拠出開始後1年間は無料。その後は資産残高10万円未満は月額226円、同10万円以上で無料


単純比較すると運営管理機関手数料は楽天証券が圧倒的に有利です。iDeCoは企業年金のないサラリーマン(2号被保険者)で年間拠出額の上限が27万6000円、新たに加入対象となる公務員などの上限が14万4000円ですから、拠出開始から1年間は運営管理機関手数料が無料ということは、すべての加入者が事実上、初年度から運営管理機関手数料が完全無料とすることができるからです。

一方、SBI証券もキャンペーンを活用すればキャンペーン期間中は運営管理機関手数料が無料となります。ただ、注目すべきは移換手数料が無料になることです。このため、すでに別の金融機関のiDeCoの加入している人で移換を検討している場合はキャンペーンを活用すればSBI証券のプランも有力な選択肢となります。また、楽天証券は他の金融機関のプランや企業型DCへ移換する際の手数料が4320円と割高な点に注意が必要でしょう。

低コストなインデックスファンドのラインアップは互角の実力


運営管理機関手数料と並んで重要なのは、商品ラインアップにどれだけ低コストで良質な商品がそろっているかです。運営管理機関手数料による差はせいぜい年額5000円程度ですが、信託報酬の差は拠出額が積み上がるにつれて大きくなっていくからです。例えば資産残高が500万円まで積み上がると、信託報酬1%の差は年間5万円、0.5%の差でも2万5000円にもなる。そこで主要資産カテゴリーごとに両社の注目の低コストインデックスファンドを比較します(カッコ内は信託報酬<税抜>)。

【国内株式インデックスファンド】

〔SBI証券〕
三井住友・DC日本株式インデックスファンドS(0.19%)
SBI TOPIX100・インデックスファンド (0.24%)
ニッセイ日経225インデックスファンド(0.25%)
DCニッセイ日経225インデックスファンドA(0.19%)
野村DC・JPX日経400ファンド(0.25%)

〔楽天証券〕
三井住友・DC日本株式インデックスファンドS(0.19%)
たわらノーロード日経225(0.195%)


国内株式ファンドは楽天証券の方が魅力的でしたが、SBI証券がTOPIX連動のインデックスファンドに楽天証券と同じ三井住友・DC日本株式インデックスファンドSを追加したことで互角となりました。TOPIXではなく日経平均に投資するファンドも楽天証券のたわらノーロード日経225が魅力的でしたが、SBI証券がDCニッセイ日経225インデックスファンドAをラインアップしたことで、より低コストな商品をそろえたことになります。また、SBI証券はTOPIXのほかTOPIX100、日経平均、JPX日経400に投資する低コストインデックスファンドもそろえているのが魅力です。

【国内債券インデックスファンド】

〔SBI証券〕
三菱UFJ 国内債券インデックスファンド(確定拠出年金)(0.12%)

〔楽天証券〕
たわらノーロード国内債券(0.15%)


このカテゴリーもほぼ互角ですが、わずかながらSBI証券の方が低コスト。国内債券ファンドは受給資格を得る60歳が近づいてきたときにポートフォリオのリスクを下げていく出口戦略で定期預金と並んで重要な役割を担う商品となります。ここで低コストなファンドがラインアップされていることは非常に大切なポイントです。

【先進国株式インデックスファンド】

〔SBI証券〕
DCニッセイ外国株式インデックス(0.21%)
EXE-i先進国株式ファンド(0.23%+投資対象ETF費用0.076%程度)

〔楽天証券〕
たわらノーロード先進国株式(0.225%)


最も重要なカテゴリーですが、こちらもほぼ互角。SBI証券は海外ETFに投資するEXE-i先進国株式ファンドが用意されていますが、純粋なインデックスファンドではありません。また、DCニッセイ外国株式インデックスファンドやたわらノーロード先進国株式のベンチマークがMSCIコクサイ・インデックスであるのに対し、EXE-i先進国株式ファンドは参考指標がFTSEカイガイ・インデックスです。両者の最大の違いは韓国の扱い。MSCIは韓国を新興国に組み入れますが、FTSEは先進国として扱います。このためEXE-i先進国株式ファンドは韓国企業が間接的に組み込まれています。

【先進国債券インデックスファンド】

〔SBI証券〕
三井住友・DC外国債券インデックスファンド(0.21%)
インデックスファンド海外債券ヘッジあり(DC専用)(0.26%)

〔楽天証券〕
たわらノーロード先進国債券(0.20%)
たわらノーロード先進国債券(為替ヘッジあり)(0.20%)


若干ながら楽天証券のたわらノーロード先進国債券が安い。とくに為替ヘッジありがヘッジなしと同じコストというのは特筆できます。日銀によるマイナス金利の影響で国内債券の最終利回りががマイナスとなる中、その代替として外国債券に為替ヘッジ付で投資するというのは、ひとつのアイデアとしてはありえます。その点で、低コストな為替ヘッジ付先進国債券ファンドがあると、加入者の選択肢が広がります。ただし、為替ヘッジコストが高騰していることには注意が必要です。

【新興国株式インデックスファンド】

〔SBI証券〕
三菱UFJ DC新興国株式インデックスファンド(0.55%)
EXE-i新興国株式ファンド(0.23%+投資対象ETF費用0.142%程度)

〔楽天証券〕
インデックスファンド海外新興国(エマージング)株式(0.53%)


長期運用となる若い加入者にとって新興国株式ファンドは極めて重要なカテゴリーですが、投資対象国の資本規制などの関係で低コスト化が最も難しい分野でもあります。このためSBI証券、楽天証券ともにやや平凡な商品しか用意できていません。ただ、純粋なインデックスファンドではなくETFに投資するファンズ・オブ・ファンズであるという点が気にならなければ、SBI証券のEXE-i新興国株式ファンドは有力な選択肢になります。こちらも参考指標がFTSEエマージング・インデックスなので、韓国のウエートが低いことに注意が必要です。一方、楽天証券はこのカテゴリーにより低コストな商品(例えば、たわらノーロード新興国株式やステート・ストリート新興国株式インデックス・オープン)を追加投入できれば、SBI証券に対する競争力は一気に高まります。

【新興国債券インデックスファンド】

〔SBI証券〕
三菱UFJ DC新興国債券インデックスファンド(0.52%)

〔楽天証券〕
インデックスファンド海外新興国(エマージング)債券(1年決算型)(0.52%)


新興国株式ファンド同様に新興国債券ファンドも低コスト化が遅れている分野です。このため両社ともラインアップは平凡です。個人的には、新興国債券の重要性というのは今後ますます高まっていくと考えているので、ぜひとも両社にはもっと低コストな商品をラインアップして欲しいところです。

【国内REIT・海外REITインデックスファンド】

〔SBI証券〕
DCニッセイJ-REITインデックスファンドA(0.25%)
三井住友・DC外国リートインデックスファンド(0.28%)
EXE-iグローバルREITファンド (0.23%+投資対象ETF費用0.114%程度)

〔楽天証券〕
三井住友・DC日本リートインデックスファンド(0.26%以内)
三井住友・DC外国リートインデックスファンド(0.28%以内)


REITは主要資産カテゴリーに次ぐ分野であり、ポートフォリオの味付けとして重宝する分野です。このカテゴリーは超低コストである三井住友・DCシリーズを国内外ともにそろえる楽天証券がリードしていましたが、SBI証券が同レベルの低コスト商品を追加することで巻き返しました。また、EXE-iグローバルREITファンドはETFを通じて日本を含む世界のREITに投資するファンドですから、REITへの投資はこれ1本で十分というのも有力なアイデアとなるでしょう。

【バランス型インデックスファンド】

〔SBI証券〕
DCインデックスバランス(株式20)(0.17%)
DCインデックスバランス(株式40)(0.18%)
DCインデックスバランス(株式60)(0.19%)
DCインデックスバランス(株式80)(0.20%)
iFree8資産バランス(0.23%)

〔楽天証券〕
セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド(0.68%±0.03%)


iDeCoは口座内でのスイッチングなら売却益が非課税なのでバランス型インデックスファンドの優位性は低いのですが、やはりリバランスの手間が惜しく、バランスファンド1本で運用してしまうという選択も否定はできません。その意味でバランスファンドも重要なカテゴリーです。この分野ではコスト面でSBI証券のラインアップが優れています。DCインデックスバランスは国内債券、国内株式、先進国債券、先進国株式の4資産に投資するファンドですが、株式比率80%のDCインデックスバランス(株式80)でも信託報酬が0.20%というのは良心的です。また、人気が高まっているiFree8資産バランスもラインアップに加わりました。8資産均等配分で信託報酬0.23%というのは魅力的です。ただし、新興国株式の対象指数は通常の時価総額加重平均インデックスであるMSCIエマージング・インデックスではなく、ファンダメンタルインデックスであるFTSE RAFIエマージング・インデックスである点は好みがわかれるでしょう。

一方、楽天証券のセゾン・バンガード・グローバルバランスファンドはコスト面ではiDeCoで購入するメリットこそないものの、非常に個性的なファンドであり、運用会社であるセゾン投信からの情報提供なども考えあわせれば信託報酬に一定の合理性があります。意外と人気が出るかもしれません。

そのほか、両社ともターゲットイヤーファンドをラインアップしていますが、あまりお薦めできません。コストが割高だからです。バランスファンドを活用する場合、SBI証券なら年齢に応じてDCインデックスバランスの各ファンドをスイッチングする方法が有効ではないでしょうか。

ユニークなファンドでポートフォリオに個性を持たせる


iDeCoでの運用もコアの部分は低コストなインデックスファンドでガッチリと足元を固めるというのが定石となります。ただ、ポートフォリオの味付けとしてユニークな指数に連動するインデックスファンドや個性のあるアクティブファンドを一部組み込むというのも面白いやり方です。リターンの向上を狙うもよし、分散の高度化を目指すもよし、情報収集を目的としてもかまわない。基本的な原則に則っていればポートフォリオは十人十色であり、万人に当てはまる最適解はありません。ポートフォリオの違いこそ、投資家の個性の表れでもあります。そして、SBI証券と楽天証券のiDeCoには、ポートフォリオに個性をもたらすユニークなファンドも用意されています。

〔SBI証券〕
EXE-iグローバル中小型株式ファンド(0.23%+投資対象ETF費用0.11%程度)
ひふみ年金(0.76%)
iFree NYダウ・インデックス(0.225%)

〔楽天証券〕
iTrust世界株式(0.89%)
iTrust日本株式(0.89%)
セゾン資産形成の達人ファンド(1.35%±0.2%)


SBI証券がラインアップするEXE-iグローバル中小型株式ファンドは、ETFを通じて世界の中小型株に投資できるファンズ・オブ・ファンズです。インデックスファンドによる投資は、どうしても大型株中心の運用となりますから、こういった低コストな中小型株ファンドを組み入れることで分散の高度化が狙えます。大型株よりも小型株の方がリターンが出やすいといういわゆる“小型株効果”を狙うのも悪くないでしょう。また、ひふみ年金は直販のひふみ投信や一般販売のひふみプラスと同じマザーファンドで運用するDC専用ファンド。こちらも中小型株を得意とするアクティブファンドですから、インデックスファンドに対してサテライトとして一部保有するのは悪くありません。マザーファンドの過去の運用成績も参考指数(TOPIX配当込み)を大きくアウトパフォームしています。ファンドマネージャーである藤野英人氏の個性や運用哲学に賛同する人も多いですから、やはり人気が出そうなファンドです。iFree NYダウ・インデックスはダウ・ジョーンズ工業株価平均に投資するインデックスファンドですが、信託報酬は最安値となっています。米国株にオーバーウエイトする場合に、非常に有効な商品といえるでしょう。

楽天証券はピクテ投信投資顧問の低コストアクティブファンド「iTrust」シリーズからiTrust世界株式とiTrust日本株式をラインアップしています。低コストなアクティブファンドとして評価できますが、とくに注目は受益者専用の情報提供サイト「iInfo」です。iInfoを通じて機関投資家向け情報を個人投資家に提供していますし、投資教育コンテンツ「BASE」はPDFテキストと動画で基礎からかかなり上級者向けまでの投資知識・理論に関するオンライン学習コンテンツを提供しています。投資についての「学び」を重視する人にとっては極めて興味深いファンドです。セゾン投信のセゾン資産形成の達人ファンドも注目です。世界の優秀なファンドに投資するファンズ・オブ・ファンズ形式のためコスト面で優位性はありませんが、やはりセゾン投信による情報発信は良質ですから、保有する意味は十分にあります。

どんなポートフォリオを目指すかで有利なプランが決まる


SBI証券と楽天証券のiDeCoを比較してきましたが、まさに甲乙つけがたい内容となりました。どちらのプランの方が加入者にとってお得なのかは、コスト面ではまったく互角と言って差し支えなありません。なぜなら、主要資産カテゴリーである国内債券、国内株式、海外株式、海外債券、REITの商品ラインアップを比較すると、信託報酬の差はベーシスポイントのレベル。この程度の差は実質コストの変動を考慮すれば、ほとんど誤差の範囲です。運営管理機関手数料は楽天証券の方が安いですが、他の金融機関のiDeCoプランから移換する人にとってはSBI証券も互角となります。このため、どちらのプランの方が有利かという問題は加入者の属性によって答えが変わってきます。

それよりも加入者がどういったポートフォリオを組みたいのかという点から両社のプランを選択することが重要でしょう。例えば中小型株や新興国株式、米国株のウエートを大きくしたい人はSBI証券のプランの方が商品の選択肢は多い。逆に為替ヘッジ付先進国債券などを重視するなら楽天証券が有利です。iTrustを保有して「学び」を得たいというなら楽天証券を選べばいいでしょうし、ひふみ年金を組み入れたいならSBI証券が選択肢となります。セゾン投信が好きだから楽天証券を選ぶというのも十分に意味のある選択です。

まさにどちらを選んでも加入者にとって手数料水準、商品ラインアップ両方の面でメリットの大きいプランとなっています。iDeCoは原則60歳まで換金できないため長期の運用となることを考えると、極端な話、SBI証券と楽天証券のどちらが信用できるかという観点から選んでもいいのかもしれません。それこそ、自分の頭を指さしながら「ここにはたくさんの知恵が詰まっているんですよ」と言う人と、ドヤ顔で「細かいことで騒いでいるのは少数派ですよ」と言う人の、どちらが信頼できるのかで選んでもいいということです。

いずれにしてもSBI証券と楽天証券のiDeCoプランは、極めて良質なサービスを提供しています。どちらを選んでも大きなハズレにはなりません。これから加入を考えている人、あるいは他の金融機関のiDeCoから移換を検討している人は、自分の属性や目指すポートフォリオを踏まえて、どちらのプランを選ぶべきか考えればいいでしょう。やはりなによりも大事なのは、加入者が納得も得心もしてiDeCoに加入することです。

【ご参考】
SBI証券や楽天証券のiDeCoへの加入を検討している人は資料を取り寄せて、じっくりと研究してみてください。SBI証券と楽天証券の確定拠出年金プランの資料請求はネットから無料でできます。⇒SBI証券確定拠出年金積立プラン楽天証券確定拠出年金プラン

また、研究のために解説書を読むことも大事です。最新の情報を盛り込んだ解説書としては大江英樹さんの『はじめての確定拠出年金投資』山崎元さんの『確定拠出年金の教科書』竹川美奈子さんの『一番やさしい! 一番くわしい! 個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)活用入門』田村正之さんの『はじめての確定拠出年金』を挙げておきます。



スポンサードリンク