2017年1月13日

インデックスファンドの低コスト競争、次の焦点はバランスファンドだ



2016年はインデックスファンドの低コスト競争が驚異的に進んだ年でした。こうした流れは今後も続きそうな気配ですが、なかでも次の焦点となるのはバランス型のインデックスファンドでないでしょうか。あくまで個人的な予測ですが、2017年はバランス型インデックスファンドの低コスト競争が顕在化しそうな気がします。もちろんその背景にあるのは、2018年から始まる積立型NISAの存在です。

私は、なんとなくバランス型のインデックスファンドというのが好きです。リバランスの手間が省けるという利便性もありますが、それ以上に面白いのは、どういった資産配分を採用するかで各ファンドのコンセプトが表現されおり、それを楽しむことができるからです。

例えば私が保有しているバランス型インデックスファンドである三井住友トラスト・アセットマネジメントの世界経済インデックスファンドは、株式と債券を半々で保有しながら、国内、先進国、新興国それぞれの資産クラスのウエートをGDP比率をベースに保有することで“世界経済の成長を丸ごと表現する”というコンセプトが非常に面白い。また、もうひとつ保有している三菱UFJ国際投信のeMAXISバランス(8資産均等型)は、8資産クラスを均等配分することで“どの資産クラスが成長するから予想できないので、全て均等に保有してしまえ”という単純明快にして大胆なコンセプトがなんとも愉快だと感じました。

そういうコンセプトの楽しさがあるからから、バランス型のインデックスファンドは根強い人気があるのでしょう。ただ、最近では個別資産クラスのインデックスファンドの低コスト化が急速に進んだのに対し、バランス型インデックスファンドの低コスト化が、やや遅れていました。

こうした状況に対して、2017年には何らかの動きがあるのではないでしょうか。それは2018年から積立NISAがスタートするからです。積立NISAは従来のNISAと異なり、年間投資額の上限が40万円で非課税期間が20年間。年間20万円という投資枠を考えると事実上、投資信託やETFによる運用を行うことになります。しかもNISA口座は売買ともに投資枠を消費してしまいますから、国際分散投資を行う場合、個別資産クラスの投資信託で運用するとリバランスがやりにくい。このため投資対象商品の主流はバランス型ファンドにならざるを得ません。

それぐらいのことは金融機関や運用会社も分かっているでしょうから、恐らく今後始まるであろう積立NISAの契約者獲得競争では、どれだけ魅力的なバランス型ファンドを用意できるかが重要になるのでは。そうなるとインデックスファンドの場合はコストの安さが最大の競争力ですから、バランス型インデックスファンドでも低コスト競争が起こるという展開を期待したくなります。

例えばバランス型インデックスファンドでは現在、大和投資信託委託のiFree8資産バランスの信託報酬が0.23%。このレベルに対抗する商品が登場するかもしれません。アセットマネジメントOneが「たわらノーロード・バランス」なんて商品を出せば注目を集めそうです。

あるいはDC専用ファンドを一般開放するという方法もあります。例えば日興アセットマネジメントのDCインデックスバランスシリーズ(信託報酬0.17%~0.20%)あたりが一般販売開放されると面白いのでは。既に三井住友アセットマネジメントの三井住友・DC年金バランスシリーズ(信託報酬0.22%~0.24%)は一般販売が開放された例がありますから。

そして最も期待したいのが既存ファンドの信託報酬引き下げです。ニッセイアセットマネジメントは昨年11月に<購入・換金手数料なし>シリーズの信託報酬を引き下げましたが、なぜか<購入・換金手数料なし>ニッセイ・インデックスバランスファンド(4資産均等型)だけは信託報酬が0.34%のままに据え置かれました。ニッセイAMのことだから、恐らくタイミングを見からって信託報酬を引き下げるのではないかと個人的に期待しているのです。

もちろん三井住友トラストAMの世界経済インデックスファンド(信託報酬税抜0.5%)とSMTインデックスバランス・オープン(信託報酬0.5%)、三菱UFJ国際投信のeMAXISバランス(8資産均等型)(信託報酬0.5%)、あるいはセゾン投信のセゾン・バンガード・グローバルバランスファンド(信託報酬0.69%±0.03%)といった実績のあるバランス型インデックスファンドも低コスト競争に参戦して欲しいものです。

さらにバランス型インデックスファンドの競争が盛り上がれば、低コストだけでなく、どういったポートフォリオ配分を採用するのかというコンセプトでの競争も面白いでしょう。時価総額加重平均と均等配分、株式と債券の割合、各資産クラスでどういったインデックスを採用するのかなど様々な選択肢が可能ですから、そこで運用会社が個性を発揮し、競い合うこともできるのです。

そういうことを含めて、今年はバランス型インデックスファンドの動向に大いに注目しています。

※文中の信託報酬は、FoFであるセゾン投信以外は全て税抜年率。

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