2017年6月7日

半導体関連が絶好調で驚異的なパフォーマンスに―ひふみ投信の2017年5月の運用成績



サテライトポートフォリオとして保有している「ひふみ投信」の2017年5月次運用報告書が出たので定例ウオッチです。「ひふみ投信」の5月の騰落率は+6.2%、参考指数であるTOPIX(配当込み)の騰落率は+2.4%でした。純資産残高は5月31日段階で606.4億円(前月は528.6億円)、受益権総口数は14,556,120,357口(前月は13,478,504,031口)でした。参考指数を大幅にアウトパフォームしたわけですが、驚くべきことに現金比率が14.5%もあるにもかかわらず、この成績をたたき出したことです。保有する半導体関連銘柄が絶好調だったとのことですが、それでも驚異的なパフォーマンスだと舌を巻かざるを得ません。

5月は懸念されたフランス大統領選挙も無難な結果に落ち着き、月前半は堅調な相場環境となりました。ただ、月後半からはトランプ大統領のロシアゲート疑惑などもあって先行きに不透明感が増し、株式相場も方向感を失ってヨコヨコで推移する展開となっていました。こうした中、「ひふみ投信」は参考指数を大きくアウトパフォームする成績を叩き出したわけですが、現金保有率を見ると、この数字は驚異的です。もともと「ひふみ投信」は相場全体が方向感を失う環境を得意(その代わり、急騰相場は苦手)としてきましたから、まさに特徴がよく発揮できた月次だったようです。

とくにパフォーマンスを牽引したのが半導体関連銘柄です。5月は決算発表シーズンですが、日本の半導体関連企業は絶好調でした。このため「ひふみ投信」の最高運用責任者である藤野英人さんも次のように銘柄選択の成功を指摘しています。
そのような中でひふみは、山一電機(6941)、イビデン(4062)、東京応化工業(4186)などの半導体、エレクトロニクス関連企業にしっかり投資をしつつ、新型ゲーム機スイッチが好調な任天堂(7974)を上位に組み入れています。
「ひふみ投信」が半導体関連銘柄を積極的に組入れてきたのはかなり前からですが、ここにきてその成果が明確に出はじめたということでしょう。この勢いがどこまで続くかは分かりませんが、現段階では大成功です。

今後の運用方針についても、従来通り「地味で地道に成長を続ける中小型企業をメインに投資しながら、半導体関連の企業など業績変化率の高い企業や業種に重きをおいて投資する戦略」は変わりませんが、注目すべきは以下のような発言でしょう。
ひふみの強みである「地味で地道な銘柄」の発掘も順調 に進んでおり、純資産総額の増加と共に、組入れ銘柄も146銘柄に増えました。
「ひふみ投信」は「ひふみプラス」「ひふみ年金」も合わせてマザーファンドへの大規模な資金流入が続いていますが、その資金の振り分け先として既に保有している銘柄を買い増すのではなく、新たに発掘した銘柄への投資に充てるという戦略です。得意とする中小型株は流動性に限界がありますから、これは妥当な判断だと思います。ただ、アクティブファンドにとって保有銘柄の増加は諸刃の剣でもあります。保有銘柄が増えれば分散が効いてリスクは下がりますが、その分リターンも平均化する可能性がある。純資産残高が増加したアクティブファンドが、だんだんとインデックスの動きと近似してくる要因となるのです。その意味では、ますますファンドマネージャーの力量が問われるようになると言えるでしょう。

5月次運用報告書から、もうひとつ大きな変化がありました。組入れ銘柄の開示が従来の上位20銘柄から、上位10銘柄+3カ月前の上位30銘柄に変更されたのです。この理由について藤野氏自身が運用報告会の冒頭で説明しています。



「ひふみ」の知名度が上がったことで少額だけ保有して売買動向を観察し、それに追随する人が増えているのだとか。それが保有銘柄の値動きを歪めることを心配しての措置です。ようするに「イナゴ対策」です。なかなか味わい深いものがありますが、こういったところも「ひふみ投信」の面白さなのかもしれません。いちいちやることが受益者を飽きさせないのです。

さて、月次運用報告書に先立って発表された中間レポート恒例の組入れ銘柄紹介です。今回は、やまみ(2820)でした。「豆腐」に代表される大豆食品の製造・販売を行なう企業 です。これは思わず笑ってしまいました。豆腐などはすっかり衰退産業だと思えるからです。ところが、やまみは積極的に自社工場への設備投資をし、生産能力の拡大とコスト削減でシェアを拡大しているとか。なるほど。藤野氏が以前から主張している「羊の群れの中の狼」銘柄ですね。衰退産業・斜陽産業というのは競争力の弱い企業が多いのですが、そんな中で経営革新や事業構造改革に成功した企業は、競合他社が弱体な分だけ競争で総勝ちしてしまうというケースがあります。そういう銘柄への投資は、実は成長産業の企業に投資するよりもリターンが良い場合もある。あいかわらず小憎らしい銘柄選択だと思います。そして、半導体から豆腐まで投資してしまう「ひふみ」の奥行というものに、やはり驚かされました。

【ご参考】
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