2017年6月18日

知らない間にコストが下がる「EXE-i」シリーズ―ファンド・オブ・ETFsの可能性



インデックス投資家にとってファンドのコスト引き下げはいつも大ニュースとなります。ところが世の中には知らない間にコストが引き下げられているファンドもある。それがSBIアセットマネジメンが運用するパッシブファンド(純粋なインデックスファンドではありません)「EXE-i」シリーズです。私はSBI証券の個人型確定拠出年金(iDeCo)でEXE-iシリーズを何本か保有していますが、久しぶりに目論見書を確認したら、きちんとコストが下がっていました。最近、このファンドはなかなか面白いという感じがすごくしています。

EXE-iは純粋なインデックスファンドではなく、海外ETFに投資することでインデックスに近似した運用成果を確保するファンド・オブ・ファンズ(FoF)、正確に言うとファンド・オブ・ETFsです。FoFは余計なコストが発生しやすいのですが、投資対象となる海外ETFは近年、ものすごいコスト競争が起こっており、信託報酬が断続的に引き下げられています。このためEXE₋iも実質コストがどんどんと低下するという嬉しい展開になりました。

例えば私はSBI証券のiDeCoで「EXE-i新興国株式ファンド」と「EXE-iグローバル中小型株式ファンド」を積み立てているのですが、現在のコスト体系は以下のようになっています。

「EXE-i新興国株式ファンド」
信託報酬(税込):0.2484%
投資対象ETFの信託報酬:0.131%
実質的な信託報酬:0.3694%程度

「EXE-iグローバル中小型株式ファンド」
信託報酬(税込):0.2484%
投資対象ETFの信託報酬:0.104%
実質的な信託報酬:0.3524%程度

かなり低コストなのですが、実は昨年までは実質的な信託報酬はそれぞれ0.3904%程度と0.3724%程度でした。いずれも0.02%~0.03%引き下げられたことになります。これは他のシリーズ商品でも同様です。

なぜコストが下がっているかと言うと、投資対象である米国のETFの信託報酬が引き下げられたから。「EXE-i新興国株式ファンド」は「シュワブ・エマージング・マーケッツ・エクイティETF」と「iシェアーズコアMSCIエマージング・マーケッツETF」に、「EXE-iグローバル中小型株式ファンド」は「シュワブ・U.S.スモールキャップETF」と「バンガード・FTSE・オールワールド(除く米国)スモールキャップETF」にそれぞれ投資しているわけですが、最近の米国ではETFのコスト競争が激化しており、昨年後半から各社とも断続的にコストを引き下げました。それが「EXE-i」の実質的な信託報酬に反映されたわけです。

こういうのを見ると、低コストなパッシブ型ファンドを組成する方法として海外ETFを活用するファンド・オブ・ETFsというやり方はというのはけっこう有望だと感じます。米国でのETFコスト引き下げ競争の恩恵を得られるだけでなく、実際の投資も数種のETFを買うだけですから売買コストも抑えることができるので実質コストもあまり高くならない。それでいてETFを通じて幅広い分散投資も可能です。

実際に新興国株式や中小型株式への投資というのはインデックスファンドでもコストを抑えるのが難しい分野です。投資対象国の資本規制や流動性の問題から、小口資金ではどうしても実質コストが高くなってしまう。ところが海外ETFを活用するれば、ETFが持つ「規模の経済」の恩恵を受けることができるのです。

もちろん、海外ETFを直接買えば、もっと低コストで投資することが可能なのは事実。また、ファンド・オブ・ETFsはパッシブ型ファンドでも純粋なインデックスファンドと異なり、複数の異なるETFに投資するためベンチマークへの連動が難しく、運用の精度を確認しにくいといった弱点もあります。

でも海外ETFを直接買うためには、やはりちょっとした投資スキルが必要です。海外ETFを買うためには外貨を調達する必要もありますが、そこで発生する為替手数料率は個人と機関投資家(運用会社)では雲泥の差があることも見逃せません。海外ETFは積立投資もやりにくい。そう考えると、多少コストがかかっても、円貨で簡便に積立投資する場合は、「EXE-i」のようなファンド・オブ・ETFsというのは、やはり面白い方法なのです。

その意味で、ファンド・オブ・ETFsという方法は、これから注目されるかもしれません。例えば新興国株式インデックスのマザーファンドを持っていない運用会社が新たに新興国株式インデックスファンドを組成しようとする場合、新たにマザーファンドを作るのではコストも人員も必要になる。それなら海外ETFに投資するパッシブ型ファンドで代用するという考え方もあるのでは。信託報酬を抑えれば、投資対象ETFの信託報酬を加えても超低コストな新興国株式ファンドを作ることができます。

米国ではETFのコスト引き下げ競争がまだまだ続きそうな予感です。理論的にはETFの信託報酬はゼロ%になるという説もあるくらい(貸株料で経費を捻出できるため)。そう考えると、ファンド・オブ・ETFsという形式を生かし「EXE-i」は今後もコストの引き下げが期待できそう。他力本願だと言えばその通りで情けない話なのですが、受益者にとっては嬉しいことに変わりはありません。やっぱり「EXE-i」は、なかなか面白いファンドなのです。

【ご参考】
「EXE-i」シリーズは主要ネット証券で購入できるほか、SBI証券確定拠出年金(iDeCo)積立プランにもラインアップされています。SBI証券のiDeCoプランは運営管理手数料が無料であり、商品ラインアップも低コストなインデックスファンドが揃っているので、最もお薦めの金融機関の一つです。ネットから無料で資料請求できるので関心のある方は研究してみてください。⇒SBI証券確定拠出年金(iDeCo)積立プラン

関連コンテンツ