2017年7月5日

まずはマイクロソフトとアマゾンに投資―ひふみ投信の2017年6月の運用成績



サテライトポートフォリオの一部として保有している「ひふみ投信」の2017年6月次運用報告書が出ました。「ひふみ投信」の6月の騰落率は+1.4%、参考指数であるTOPIX(配当込み)の騰落率は+3.0%でした。純資産残高は6月30日段階で673.1億円(前月は606.4億円)、受益権総口数は15,926,841,841口(前月は14,556,120,357口)でした。久しぶりに参考指数をアンダーパフォームしてしましたが、6月も現金比率が約10%と比較的高いので仕方ない面があります。それよりも注目は6月から新たに米国株をポートフォリオに組み入れたことです。注目の銘柄は、マイクロソフト(MSFT)とアマゾン(AMZN)でした。

6月は日経平均株価も2万円台をキープするなど株式相場は比較的堅調な動きとなりましたが、総じて材料も少なく上値も限定的でした。このため前月まで好調な成績が続いていた「ひふみ投信」としても、その反動で上値が追うことができなかったと言えそうです。

そうした中、やはり注目は新たに組入れた米国株でしょう。まずはマイクロソフトとアマゾンという2銘柄からスタートです。いかにも素人臭い銘柄選択で、あまり「ひふみ」らしくないと思えるかもしれませんが、個人的にはマイクロソフトへの投資は大注目だと思う。実は個人的にもマイクロソフトは個別株で持っています。米国のIT系銘柄では最も保守的な銘柄だと思われがちですが、現在のマイクロソフトは大胆な事業構造の変革の真っ最中。はっきり言って従来の飯のタネだった商権をどんどん捨てて、新しいビジネスモデルを構築しようとしている。もうマイクロソフトは「Windows」や「Office」の会社ではなくなろうとしている。それよりも「Azure」などクラウドコンピューティングプラットフォームへの移行を進めているわけです。その意味で今のうちに買っておきたい銘柄だと個人的には思います。

もっとも短期的には米国株への投資は「ひふみ」の運用成績の足を引っ張る可能性も少なくないでしょう。そもそも米国は利上げが控えていますから、基本的に当面は下げ局面と見ておくべきだからです。そのあたりはファンドマネージャーである藤野英人さんも理解していて、次のように述べています。
短期的には米国の長期金利が上昇局面にあるので、株価は下降局面ですが、買い増しをしながら長期投資をしていく予定です。
米国株へは資産全体の10%程度を当てるようですから、まだ買い余力がある。2銘柄に加えて、さらに渋い銘柄にまで食指を伸ばすようなれば、それも面白いでしょう。

さて、「ひふみ」に関してもうひとつ注目なのが、このほど創薬ベンチャー企業であるテラ(2191)の第三者割当増資による新株を引き受けたことでしょう。投資額は約10億円です。公募投信が新興企業の第三者割当増資を直接引き受けるというのは非常に珍しい。この点に関しては藤野氏自身が「ひふみアカデミー」で説明しています。



要するにIPO直後の新興企業が新規資金調達に困るケースが多く(いわゆる“死の谷”)、そこに投資妙味があるという考え方。もちろん、これは非常にリスキーな投資でもあります。なぜIPO直後に資金調達に困るのかと言えば、普通の金融機関などからすればリスクが高いと判断されるからにほかなりません(もっとも、日本の金融機関には新興企業のリスクを適正に評価する能力がないという面もありますが)。その意味で今回、「ひふみ」が“ポストIPO”への投資に踏み切ったことの意味をよく考えないといけないでしょう。なにしろ新興企業の増資というのは、場合によっては市場から資金を抜き取るだけの悪辣な仕組みになっている場合すらありますから(いわゆる“ハコ企業”問題)。この点については今後も受益者の1人として注意深くウオッチする必要があります。

「ひふみ投信マザーファンド」の純資産残高は2685億円を超えました(6月30日段階)。いよいよ日本株投信にとって運用の機動力を失うとされる3000億円が目前です。なにもしなければ、ポートフォリオは大型株中心へとシフトし、場合によっては疑似インデックスファンド化してしまう。そうしたアクティブファンドとしての課題に対して「ひふみ」が出した答えが「米国株」と「ポストIPO」であるということが明確になったわけです。今後、受益者は「ひふみ」に投資を続けるか、あるいは新たに資金を投じるのかを判断するために、こうした点を重々理解することも必要だと強調しておきたいと思います。

さて、月次運用報告書に先立って発表された中間レポート恒例の組入れ銘柄紹介です。今回は、キューピー(2809)でした。これは説明不要でしょう。日本を代表する調味料メーカーの一角です。紹介の最後に「デフレ消費が復活しても、マヨネーズは安定的な需要が見込める商品といえます」とあるのが可笑しい。確かにビンボーになればマヨネーズは最後の砦。何にでもマヨネーズを付けて食べることで飢えをしのぐに違いないからです。

【ご参考】
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