2018年2月7日

株価暴落で明らかになる“不都合な真実”―リスク許容度の範囲内で投資している人だけが儲けることができる



2018年2月5~6日にかけて日米とも大幅な株価暴落に見舞われました。2017年は近年まれに見る好調な相場が続いていただけに、最近になってインデックス投資や積み立て投資を開始した人にとっても驚きの展開だったかもしれません。個人投資家だけでなくしばらく下落相場を経験していなかったプロ投資家の中にもパニックに陥った人がいたのではないかと思えるような値動きでした。ただ、今回の暴落で投資初心者の人には単純に「やっぱり投資って怖い!」と思って欲しくない。それよりも暴落という現象の背後で起こっている、ある“不都合な真実”に気づいて欲しいのです。それは、長期投資においてなぜリスク許容度の範囲内で投資することが重要なのかということです。

今回のような一種のパニック相場になると、多くの投資家が狼狽して保有株を投げ売りします。すると売りが売りを呼んで、さらなる下落を引き起こすとという悪循環に陥る。では、なぜ狼狽して投げ売りするのか。それは、その人にとってリスク許容度(あるいは心理的なリスク選好度)を超えた投資をしていたからです。

しかし、ここで重要なことに気づく。それは、狼狽した投資家が株を投げ売りしたときに、それを「売る」ことができたのは、同じだけ「買う人」がいたということです(売買は常に売りと買いが均衡したところでしか成立しません)。では、どんな人が「買う」ことができたのか。それは、リスク許容度の範囲内で投資していた人たちにほかなりません。リスク許容度の範囲内で投資している人たちは、多少の暴落でも生活自体はびくともしません。だから、逆に余裕を持って値下がりした株を買うことができるのです。

ここに株式投資における厳しい現実があります。暴落に直面すると、リスク許容度を超えて投資している人は株を安く手放してしまう。リスク許容度の範囲内で投資している人は、欲しい銘柄を安く手に入れることができる。長期投資になれば、こういった状況が定期的に繰り返されますから、どちらの人が最終的に儲けることができるかは明白でしょう。株式投資で利益を上げる方法のひとつは、いかに安く買うかですから。

つまり、株式投資においてはリスク許容度の範囲内で投資している人だけが最終的に儲けることができるということ。暴落局面というのは、そういった厳しい現実を明らかにしてくれる契機でもあるのです。

これはある意味で“不都合な真実”でもあります。そもそも人はなぜリスク許容度を超えた投資をしてしまうのか。それは「早く、大きく儲けたい」と思ってしまうから。逆にリスク許容度の範囲内で投資する人というのは「ゆっくりでかまわない」そして「そんなに大きく儲けなくてもいい」と考えている。ところが現実は「儲けたい」と強く思っている人がどんどん損をし、「そんなに儲けなくてもいい」と考えている人がどんどん儲かってしまう。皮肉なものです。

そして、これを敷衍すると、もっと不都合な真実に気づきます。多くの場合、貧乏な人ほど「儲けたい」と強く思うのに対して、お金持ちは「ほどほどの儲けでかまわない」と考えることができる。結果的に貧乏人ほどリスク許容度を超えた投資をやりがちであり、お金持ちは余裕を持ってリスク許容度の範囲内の投資を心がける。そして何度かの暴落局面を経て、貧乏人はさらに貧乏になり、お金持ちはますますお金持ちになる。「投資はお金持ちが有利」と言われますが、それは結局、リスク許容度の範囲内で投資することができているかどうかの差なのです。

だから、今回のような暴落局面を経験したときこそ、改めて自分のリスク許容度の範囲内で投資することの重要性を考えないといけない。それは損するのを抑えるためではありません。最終的に投資のリターンを得るために必要なのです。そして、自分のリスク許容度の範囲内で投資することができれば、多少の暴落も怖くないのです。

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